竹林。

その瑞々しい緑色、迷いなく天空を刺す佇まいは私たちの美意識を掻き立てる。

しかし、多くの人は美しさの裏側の荒々しい生態を知らない。

目に映る地上の竹林を「静」とすれば、それと対をなすように地下世界では「動」が存在する。

此度は、竹林の「動」を象徴する竹林の竜について紹介しよう。


もう一つの竹の世界:

「竹林に棲む竜」の正体は、竹の地下茎である。

竹林の地下では、これが幾重にも交差しながら、縦横無尽に伸びており、竹林まるごとが一つの地下茎で繋がっていることもある。

目に映る無数の竹が、それでひとつの個体を形成しているのだ。

また、この地下茎には多くの節があり、その一つ一つに後にタケノコとなる芽が生えている。

この節の存在や茎の質感から地下茎には、どこか地上の幹と似ているところがある。

しかし、うねりながら自在に地中を突き進む躍動的な荒々しさは、まさに大地をむさぼる竜のようだ。


地下茎、その生態と問題:

地下茎は、年に2~3mの速度で成長する。

1日に1mも伸びる地上の幹と比べれば見劣りするが、水平方向での生長としては驚異的速度で、他の植生や田畑への侵入が問題とされている。

また、地下茎は浅い層(~50cm)に偏っているので、斜面に位置する竹林で地滑りの危険が高まることもある。


人×竹:

日本最古の物語である「竹取物語」の冒頭には、讃岐造(さぬきのみやつこ)という老翁が竹を採って生活の支えにしている様子が綴られている。

そこからは、人と竹が太古から関わり合っていた背景が伝わってくる。

しかしながら、昨今では竹の利用が減ったことで、前述のような侵入問題などが起こる有様である。

一度結んで関係を捨てたことで関係を捨てたことで摩擦が生じることは、人相手でも自然相手でもまま見受けられるのが世の常だ。

問題は、その先だ。

摩擦を踏み越えて進むか、はたまた再び竹林の竜と供に歩む未来をとるか、我々は選択を迫られている。


(編集後記なし)


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